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タイトル未定

オリジナル設定のマイ・アサルトリリィが中心です

当サイトで扱うアサルトリリィの設定はオフィシャルとは若干異なっています。
詳細は下の用語集にて

◆AssaltLily 用語集
◆オリジナルキャラ設定 一覧
◆Original AssaltLilyストーリー 記事一覧

My AssultLily設定『四十九院美影』編

 

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キャラクタープロフィール

■名前
四十九院 美影(つるしいん みかげ) 

■出身地
日本国 陸州
■誕生日
9月1日
■身長/体重
159cm/47kg

 

 

 

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■Who's "MIKAGE TSURUSHIIN"

  霊能力で知られる仏門の家に生まれ、地元のガーデンから二度の編入によって百合ヶ丘女学院中等部にまで上り詰めたエリートです。
 しかし、高等部へ昇級すると優秀な外部生徒に押され、これまで守ってきた学年上位の座から転落してしまいました。
 さらに、中等部時代にシュッツエンゲル(契りの姉)を願い出た相手が、体内のダメージにより前線に出られなくなった事で、完全に目標を見失ってしまいます。

 美影には潜在的な実力があるのですが、基本的に面倒くさがりやで、やや斜に構えているために能力を発揮できていません。
 レギオン内でも『自分はやれる事だけやればいい』というスタンスで、問題児というほどでもないのですが、少々積極性に欠けています。

 本人には懸命に努力して学年上位を競いたいという思いがあるものの、自分がいくら努力してもトップになるのは難しいと考えていて、サボるべきか頑張るべきか、自分はいったいどうしたらいいのだろうと悩んでいます。

 

 

 

 

 

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■MIKAGE's Autobiography

 四十九院美影(つるしいん みかげ)は、兜卒天(とそつてん)にまつわる信仰の厚い家系に生まれた。
 高僧であった先祖は死者から生まれたといわれており、その所為か家の者は代々霊を操る能力があった。
 美影も生まれつき霊能力が備わっていて、十二歳になる頃には幾体ものリビングデッドを使役する事が出来るようになっていた。

 四十九院の家ではそう言った特異な力を持っていたこともあって、凡人として生きよという教えがあった。
「一握りの天才は世界を変えられるかも知れないが、実際に世界を支えているのは凡人の努力だけである」
 と、事ある毎に凡人を持ち上げ、堅実に生きる道を大切にしてきた。

 しかし、美影は幼少の頃よりこの考え方には疑問があった。

(私は特別な天才かもしれないのに、最初から凡人だなんて決めつけないで!)
 そう思い続けてきた美影は、あえてリリィに志願した。

 問題は進学するためのガーデンだった。
 仏門に組するガーデンは少なく、名門とされるガーデンは実家の宗派とは異なっていた。
 同じ仏門でありながら宗派の違うガーデンに通うか、あるいは別の信仰を持つガーデンに進むか。

 結局美影は『遠くまで通うのは面倒だし』という理由で、単純に実家に一番近いガーデンに決めた。

 

 美影には、本人が思っていた以上にリリィとしての才能があった。

 行政府の勧めで二回の編入を経たのち、地元陸州のガーデンから、名門と呼ばれる鎌倉府の百合ヶ丘女学院にまで上り詰めた。

 自分は平凡ではなく特別だと証明するために地道に努力し続けてきた結果、美影は名門ガーデンへの移籍という形で、十分すぎるほど高い評価を受ける事が出来たのだ。

 しかし、その頃の美影は少し疲れていた。
 努力し続ける事に限界を感じていた美影は、ある時これ以上の高みを目指す事を諦めてしまう。
 百合ヶ丘女学院の中等部まで来られた事で、初心を忘れてもう満足してしまったのだ。
 それからは、なるべくラクをしようと、バックゾーンに配置されるために射撃の腕ばかりを磨くようになっていた。
 

  

 

 

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 百合ヶ丘女学院の中等部のリリィは、実戦経験を積むために高等部のバックアップとして戦場へ送られる事がある。

 美影も中等部リリィのひとりして、バックアップメンバーに選出された。
 その戦いでは、
美影のバックゾーン志望が意外な形で報われ、期待以上の活躍をする事ができた。

 美影は初めての戦場でもパニックにならず、ヒュージがバックゾーンに奇襲を仕掛けてくるというイレギュラーな事態にも冷静に対応した。

 美影は、ヒュージの群れをたったひとり(と無数のアンデッドファイターたち)で食い止め、正確な射撃で味方の反撃を援護する事ができた。
 その時の美影はみんなから賞賛された。

 そして、その時支援した仲間のひとりが、当時高等部一年生のエリーン・トオノツギだった。
 

 一学年当時のエリーンは、いたって平凡な能力のリリィだった。
 百合ヶ丘女学院という最高峰のガーデンにおいては平凡にしか映らないエリーンだが、美影にはその生き方が他の人たちとは違って見えた。

 有能な先輩の足を引っ張りながらも怪我も省みずに食らいついてゆくエリーンに、美影は他の人にはない特別な何かを見出した。
 決して天才ではないが、ただの凡人として片付けるのも納得できず、美影はエリーンにちょっかいを出した。

 周囲から高い評価を受け、怖いもの知らずだった美影はこう尋ねた。「あなたは優秀な先輩の足を引っ張っているのに、どうしてそこまでして戦っているのですか? 頑張っただけじゃ評価されませんよ。何よりも結果が重要でしょう?」と。
 エリーンは答える「周囲の実力は関係ない。結果もだ。オレは自分が置かれた状況で最善を尽くしている。他人の評価など犬にでも喰わせておけ」と胸を張るくらいの勢いでそう言った。
 エリーンはまわりの足を引っ張っている事を微塵も気にしていない様子だった。
 考えられる範囲で全力を尽くし、その結果として足を引っ張ったのだからオレは悪くないと、むしろ全力を出した事を誇りに思っているかのような態度だった。

 しかし、その答えは美影の腑に落ちないものだった。
 やはり何より大事なのは他人の評価ではないのだろうか。
 誰かの役に立っても感謝されなかったら骨折り損だし、敵を倒しても成績評価対象外であればそれは時間のロスになる。

 なにより、誰にも評価されず、感謝もされなかったら、ヒュージを倒してもむなしいだけではないだろうか。
 美影にはエリーンの価値観が理解できず、それ以来美影はエリーンに気を配るようになっていた。

 百合ヶ丘女学院の高等部では人並みでしかないエリーンだが、常に最善を尽くそうとする生き方でいったい何を為し遂げられるのか、美影は密かに興味をもった。

 

 エリーンは、リリィにしては珍しく、伸び悩むことなく成績がずっと右肩上がりで伸び続けるタイプだった。
 成長において、ブレイクスルー(レベルアップ)のタイミングさえ定かではない。
 常に壁にぶち当たっているようでありながら、それでいてエリーンの能力は気がつくと伸びているという感じだった。
 一年生の頃62までしかなかったスキラー数値は二年生になると66になり、二年の秋頃にはとうとう70を超えていた。

 しかし、どれだけ全力を尽くそうとも、エリーンは優秀な先輩に追いつく事は決してなかった。
 三人の新生徒会長はもとより、ジークルーネ旗下の八部衆と呼ばれる実行部隊にさえ演習で返り討ちにあう有様だった。
 あれだけ必死に努力して、それでも報われない現実をみせつけられて、それでまったく凹まない人間が本当にいるのだろうか。
 高等部の摸擬戦を盗み見していた美影の心は少し悲しくなった。

 されど、当のエリーンは少しも動じていなかった。
 誰かのレギオンに組する事もなく、凡人並の才でありながら、一切の迷いを持たずにひとり我が道を歩き続けていた。

 美影はエリーンが自分の価値観を超えていると感じ、報われずとも凹む事のない様子を見て、この人は本当にすごい人だと感心した。
 美影はその感動をエリーンに伝え、もし高等部へ進学したら守護天使の契りを結んであなたのシルトになりたいと相談した。

 エリーンは「興味がない」と断るが、美影はあきらめず、「勝手にその背中を追いかけてもいいですか? もし私を認める気になったらシルトにしてください!」「私はエリーン様の隣で共に戦いたいんです!」とガラにもなく熱心にお願いした。

 

 その日から、美影は自分も前線に立てるよう、射撃以外の訓練も熱心に行うようになった。
 すぐにレアスキルの才能が開花し、マギを霧に変える『フォグ』を身につける事が出来た。

 マギを霧に変える、というのは特殊能力としては地味なものだが、美影はエリーンを見習って前向きに受け止め、マギで作り出した霧を前線での戦いに積極的に取り入れていった。

  その甲斐あって、美影の成績はみるみる上昇し、その学期末の成績は学年トップクラスと呼べるほどになっていた。

 手応えを感じた美影だったが、同時に不安も抱えていた。
 なぜなら、自分がどんなに努力しても手が届かないと思えるリリィが同世代に少なくとも数人は居たからだ。
 彼女達は時間の使い方が上手く、しかも疲れ知らずとも思えるほど厳しい自主練習を
行っていた。

 美影は天才に近い素質を持ったリリィたちに勝てる気がしなかった。
 じきに伸び悩みの時期が来て成績が頭打ちになると、美影は(どうせこれ以上上へは行けないのに、いつまで必死の努力を続ければいいのだろう)と大きな不安を感じ始めていた。

 

 

 

 

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 四十九院美影(つるしいん みかげ)中等部三年。
 エリーン・トオノツギ高等部二年。
 
運命の一月ーー

 美影は芦ノ湖における避難民救出作戦で、エリーン・トオノツギの自爆を知らされた。
 母艦級に背後から狙われるという絶望的な状況から、エリーンが大量のマギを抱えて自爆した事によって突破口が開かれ、大勢の避難民やリリィが救われたのだと人伝えに聞かされた。

 だがその時、美影の中で何かが砕け散った気がした。

 結果を気にせず全力を尽くすエリーンの生き様、その末路を見せられた気分になった。
 百合ヶ丘女学院における一部の天才は、そんな絶望的な状況下でも自力で生き残ったのだという。その中の一人に七葉凜梨果(ななは りりか)という一年生がいると教えられた。
 彼女は最前線にいながら、たったひとりで敵陣を切り抜け、無事に帰還したらしい。
 それは常人では決して出来ないだろうと言われた。敗戦の中でもその能力は評価され、一躍有名人になった。
 その話を聞いた時に美影が発したのは、「そんなにすごい人なら、エリーン様を助けてくれたっていいじゃない! 天才は世界を変えられるほどすごいんでしょ!」というやり場のない怒りの言葉だった。
 美影は自分でもおかしな事を言っているとわかっていた。
 たとえ天才的なリリィでも、不可能を可能にしたり、奇跡を起こすなど簡単にできるわけがない。生存困難な状況で生き延びるのがやっとだろう。天才がなんでも出来るというなら、芦ノ湖の戦いでも勝っているはずなのだ。

 エリーンはおそらく自分の意思で自爆したに違いない。
 それはもう誰にもどうしようもない状況で、エリーンはその時自分にできる最善を尽くしただけ。それが自己犠牲の行いだったのは偶然に過ぎない。
 あの背中を追いかけていた美影にはエリーンの考えが手に取るようによくわかった。

 だが、美影の予想を超えた奇跡が、現実には起こっていた。
 エリーンの生存は遅れて伝えられた。美影は耳を疑った。

 矢も盾もたまらずに、美影は駆け出した。
 ベッドの上で身動きの取れないエリーンを見たとき、美影はあふれ出る涙を押さえられなかった。

 しかし、すぐに現実を知らされる。エリーンは『生きているのが奇跡のような状態』で『もうリリィとして戦場に立つ事は不可能』なのだという。

 美影は再び失意のどん底に突き落とされた。
 エリーンが生きていた事は涙が止まらないほど嬉しい。しかし、リリィとしての目標はこれで完全に失ったことになる。

 エリーンは二週間ほどで退院したが、普通であれば廃人同然の身体であった。魔力を使って肉体の補助を行い、ようやく日常生活が送れるような状況になっていた。
 こんな状態でもエリーンの魔力値はさらに上昇していたが、リリィとして戦えなくなったエリーンにとっては、スキラー数値などなんの意味ももたないただの数字に過ぎなかった。

 美影はエリーンのために何かしなくてはならないと思いながらも、何もできない自分が腹立たしかった。
 この時期の美影は本当に何もできず、来る日も来る日もただぼーっとして過ごしていた。

 

 

 

 

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 そんなある日、エリーンから突然高等部へと呼び出された。

 なんでも命の恩人である七葉凜梨果の主催でケーキパーティを行うのだという。
 美影は最初、そのパーティはエリーンの生還祝いなのではないかと考えた。

 しかし、エリーンの性格からしてこの状況で生還祝いなどをしたら、感謝するどころか激怒するだろう。そう考えて思い直した。

 美影はエリーンの生還祝いという思いは心の中に留めるつもりで参加した。
 案の定、やはりエリーンに対してお祝いの言葉はなかった。結局これが
なんのためのパーティだったのか、とうとう最後までわからなかった。

 美影はこの日、いままで誰の誘いにもなびく事のなかったエリーンが、七葉凜梨果のレギオンに加入していた事を聞かされた。
 美影にはレギオンへの勧誘はされなかったため、このパーティに呼ばれたのはエリーンから意思を確認されたのだと思った。『いまでも自分の背中を追いかけるつもりなのか、自分はもう追いかける価値さえないんだぞ』と。

 美影は夜も眠れないくらい悩んだ。
 自分はリリィとして、このまま半人前で消えてゆくのかとも考えた。
 ただ、ひとつだけ確かな事があった。それは自分のリリィとしての目標はエリーンを置いて他にはないという事だ。
 百合ヶ丘女学院には、優れた天才はいくらでもいる。だけど、彼女らに嫉妬する事はあっても、尊敬する気持ちはまるで起きなかった。

 ゆえに、レギオンマスターである七葉凜梨果を尊敬する気持ちは全くと言っていいくらいにない。斜めに構えて彼女を見る事しか出来なかった。
 ただ一方で、七葉凜梨果はエリーンの命の恩人でもある。エリーンがレギオンに加入したのも借りを返したいという部分が少なからずあるのだろう。
 では、エリーンを尊敬する自分も七葉凜梨果の助けになるべきなのか。
 こういった天才の人間と比べたら自分は凡人にまで落ち込んでしまうのに、それでも七葉凜梨果のレギオンに入るべきなのか。

 眠れない夜が続き、答えが出ないまま、高等部の入学式を迎えた。
 学外から優秀なリリィを多数迎え、必然的に美影の順位は下がってしまった。最初の試験は学年平均とピッタリ同じになってしまった。
 少し前まで成績上位だった自分が真ん中にまで落ちてしまったことで、これまで下に見ていた級友からはこう言われた。「あら、美影さんは高等部ではミス学年平均ね」と。
 美影が反論できずにいると、いつの間にか『ミス学年平均』というあだ名が学年中に広まってしまった。
 中等部で上位に上りつめた四十九院美影(つるしいん みかげ)ですら高等部では学年平均にまで落ちてしまう。百合ヶ丘の高等部のレベルはそれだけ高いのだ、と。
 そういう風にまるで高等部のレベルを象徴する代名詞のように使われてしまった。

 美影は完全にやる気をなくしてしまった。
 得意だった射撃の成績が落ちたのは悩みを抱えて心労があった所為だが、そんな事はごく親しい人たちにしかわからない。特に学外から来た生徒たちからはそれが美影の実力なのだと当たり前のように思われていた。

 その時の美影は、努力というものは理由があって初めてできるものだと考えていた。
 何か目標があって、それに向かうために必要だから人は努力する。
 成し遂げたい結果から逆算して、いま必要なものを用意する作業を人は努力と呼ぶのではないだろうか。そう考えるようになっていた。
 そして、目標のない自分はもう凡人でいいやと思うように変わってしまった。

「だってほら、面倒だし……」
 美影はそう呟きながら、目線を下げて校内を彷徨っていた。

 

 

 

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 後日、美影は七葉凜梨果(ななは りりか)より正式にレギオンへの勧誘を受けた。
 勧誘が遅れた理由は、凜梨果(りりか)からすれば美影は勧誘しなくても自分から入ってくるだろうと考えていたからなのだが、
美影は成績上位者に断られた後に仕方なく自分を誘ってきたのだと解釈した。

 美影は屈辱を味わった気分になるが、他に行くアテもないので、結局七葉凜梨果の『グランツェンダー・グラナート』に加入申請を出す事にした。

 グランツェンダー・グラナート のレギオンルームでは、一人の暴君に先輩達が苦労をしいられていた。
 正確にはそうではないのかも知れないが、美影の第一印象はそうだった。

「歩穂(あゆほ)。お茶のおかわりを頂戴!」
「あ、は~い」
 長身の女性『西九条歩穂』(にしくじょうあゆほ)は、肩書きこそ副長であるものの、お茶汲みから掃除洗濯まで、雑用全般を任されているようだった。
 美影の記憶によれば、たしか歩穂がレギオンに加入するまでの間、七葉凜梨果は「歩穂さん歩穂さん」と下手に出て擦り寄っていたはずだ。
 それがレギオンに加入した途端、呼び捨てにしてコキ使っているように見えた。

「トオノツギ先輩、ねえ聞いて! 今年度の予算は前年度の四分の一だって提示されたのよ! いくらなんでも酷すぎると思わない!?」
「うるさい! 取り潰されなかっただけでもありがたいと思え!」

 そして、エリーンはと言えば、書記から会計まで事務仕事全般を一人でこなしていた。人手不足とは言え、身体の自由が利かないエリーンにたくさんの仕事を任せすぎだと美影は気になった。
「でも、サポートデバイスはメンテナンスに結構費用がかかるんですよ? 倹約しても一学期でなくなるような予算で、どうやりくりしたらいいって言うのよ! 戦えば戦うだけ赤字になるんじゃ、成績を上げられないじゃない!」
 この時期の凜梨果はとにかくイライラしていた。
 その怒りがなぜエリーンに向けられているのか、美影にはわからなかった。
「……あの、凜梨果さま。差し出がましいようですが、どうしてエリーンさまの事を様付けで呼ばないのですか?」
「いいの、これがウチの流儀なの! なんならわたしの事もさん付けでいいわよ、美影!」
「……むり……です」

 自分に対して遠慮がないのはまだ許せるが、エリーンに対する敬意や配慮がない事がとにかく気になって仕方がなかった。
 だから、美影にとって七葉凜梨果の印象は最悪だった。
 誰よりも才能と実力があって、それでいて気分屋の王女様というのはひどく厄介なものだ。
 人に迷惑を掛けるような天才になるくらいなら、やっぱり自分は凡人でいいのかも知れない。
 武器磨きをさせられながら、美影はひとり溜息をついた。

 

 

 

 

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「美影、手伝え」
 ある日、エリーンにそう言われた美影は、台車を押して第二グラウンドに荷物を運び込んだ。
「なんですか、これ……?」

 梱包を解くと、なにやら大仰な装置が目に入った。
「美影は、壊滅する前のグランツェンダー・グラナートのレギオンマスターを知っているか?」
「いえ……」
「去年の話になるが、生徒会長ジークルーネの旗下に"八部衆"というのが居たんだ……」
 エリーンは昔話と同時に美影に指示を送り、荷物を組み立てはじめる。

八部衆の話は聞いています。前年度のジークルーネの勢力で、秘密警察のような組織だったとか」
「そうだ。その中の一人に『六臂爆流(ろっぴばくりゅう)のエンガンチェ』という二つ名の持ち主が居た……」
「はい」
「名前を五島海松(ごとう みる)という。凜梨果のシュッツエンゲルで、ここのレギオンマスターだったリリィだ」

「そうですか……」
 美影は無感動に応える。八部衆はエリーンの敵わなかった相手だし、凜梨果のシュッツエンゲルになど全く興味がもてなかった。
「その五島が何故『六臂爆流(ろっぴばくりゅう)のエンガンチェ』と呼ばれていたのか、その答えがここにあるんだ」
 エリーンの指示の下、美影が組み立てたそれは四本のアームが取り付けられたバックパックだった。
「これは一体…?」
「スタイルアルムアインハイトという。五島が使っていたサポートデバイスの姉妹機だ。三月に工廠科へ調整に出しておいたのがようやく戻ってきたんだ」
 エリーンはバックパックを背負いベルトを締めようとしていた。慌てて美影も手伝う。
「エリーンさま、一人で立てます?」
 美影の介助を受けながら、バックパックを背負ってエリーンは立ちあがった。
 しかし額には尋常ではない量の汗をかいている。立っているだけで精一杯なのが誰の目にも明らかだった。
「五島は足を痛めていた。だから機動力を犠牲にしてでも攻撃力の向上を目指し、マギでアームを動かすためのアインハイトを作った」
 苦しそうな声でエリーンが続ける。

「それが、これですか」
 美影の手にあるバックパックには、マギクリスタルのフラグメントが埋め込んであった。ここに魔力を流し込めば装着者の意思でアームが自在に動かせるはずだ。

「この四本のアームと生身の腕を自在に操る事で、五島は『六臂(ろっぴ)』となっていたわけだ」
「なるほど……確かにこれを使えば、阿修羅像みたいな六本の腕になりますね」
「だが結局、五島はこれでは満足せずに守備力の向上も見込めるスタイルアルムマンテルを新たに発注して、そっちを使っていた。性能はマンテルの方が上だが、あれはさらに重くなる。いまのオレに扱えるのはこっちが限界だろう……」
 足を震わせながらも、エリーンはなんとか自力で立ち続けている。しかし、大量のマギを消費しているのが目に見えてわかるほど、エリーンは苦しんでいた。
「……エリーンさま、一度下ろしませんか?」
 心配になった美影はそう提案するが、エリーンは聞く耳を持たなかった。
「く、ぐうっ…」
 エリーンは苦しみながらも意識を集中して、バックパックから伸びるアームのひとつを動かした。魔力を送られたアームは軽快に動き、きびきびと上下動を繰り返している。どうやらテストは成功のようだ。
「くそったれ! このポンコツがっ!」
 エリーンは声を荒げて腰を下ろした。
「ど、どうしたんですか?」
 美影はエリーンの様子に驚いた。
アインハイトは正常に動いていたように見えたが、どこかに欠陥でもあったのだろうか。

「くそ……自分の手足を動かすよりもラクに動きやがる。こんなカビが生えたような機械より自分の身体の方がポンコツだったんだ! こんなに悔しいことがあるかッ!」
 エリーンは怒りに顔を歪ませている。
 傍目にはわかりにくいが、エリーンの身体は機械のアームよりも動きが悪い。それは日常生活においてもそれだけ自由が利かないという事だ。
 美影は悲しくて涙が出そうになった。

「それで、エリーンさま。この機械で一体何をしようというのです?」
 自分でも愚問だと思ったが、美影は尋ねずにはいられなかった。
「決まってる。凜梨果の野郎に一泡吹かせてやるんだよ」
「はい?」
「いつまでも舐められっぱなしじゃ気がすまないからな。戦線復帰してあいつにオレの強さを思い知らせてやる」
「戦線復帰って……どうしてそこまで戦おうとするんですか?」
 美影はいつぞやと同じ質問を繰り返した。ここまで来ると、尊敬を通り越して一瞬呆れそうになってしまった。
 身体がこんな状態になっているのに、エリーンはリリィとして戦おうとしている。その理由は一体なんなのだろう。
「そんな事は決まっているだろう」
 エリーンが前置きをしたことで、美影にはこの人が次に何を言うのか、なんとなくわかってしまった。
「オレは、いまの状況で自分がベストだと思う事をやるだけだ……」

 美影にはエリーンの言う事は予想できるのだが、エリーンの気持ちが本当に理解ができない。
 そう……例えば、ヒュージが憎いから戦うというのならまだわかる。
 エリーンがヒュージの手によって両親を失くした事は美影も知っている。エリーンが生涯をかけて復讐に臨んだとしても不思議はない。

 だが、エリーンの瞳に怒りはあっても憎しみはないように見えるのだ。美影の目には、エリーンは復讐のためではなく、何か別のもののために戦っているように見えた。

 何がエリーンをそうさせるのか、それがわからないから美影はエリーンに惹かれているのかもしれない。
 美影は、自分がエリーンのファンになっている事に気づいた。
 いつの間にか、ただの興味本意以上に、エリーンの人生に関心をもってしまっていた。

「エリーンさま…あのっ!」
 美影は胸に貯めてきた思いを伝えようと口を開く。
「あの……以前言った事を覚えていますか?」
「美影」
「……はい」
「もう一度立ちたい。手伝ってくれ」
 美影の決意などお構いなしと言った感じに、エリーンは再び立ち上がろうとしている。
 だから、美影は手伝いながら告げることにした。

「以前も言いましたけど、私をエリーン様のシルトにしてもらえませんか?」
 美影の心は決まった。

 もう背中を追いかけるのは今日限りでおしまいにしよう。
自分もこの人との隣でじ道を歩いてみたい――そんな想いが胸に詰まっていた。

 もしもエリーンがいなければ、自分は光を失って霧の中を彷徨うことになる。それはここ最近の悩んだ日々で思い知らされた。

「オレに美影のシュッツエンゲルになれと? 悪いが、オレはそういった事に興味がない」
 しかし、そんな美影の思いすら、エリーンは無情にもつっぱねてしまう。
「シュッツエンゲルの責任を負うのが怖いのですか? いまのエリーン様では私を守れないと……」
「誤解だ。そんな事は考えた事もない」
 エリーンの瞳に迷いの色はない。特に深い理由はなく、単純に興味がないだけのようだ。

「なら、べつにいいでしょう? エリーン様は今まで通り自分の道を行って下さい。私はこうやってエリーン様を支えながら勝手にあなたを追いかけますから」
「オレなんて、追いかける価値もないだろう?」
「世界を変えるのはごく一部の天才ですけど、それを支えるのは大多数の凡人らしいですよ……」
「それがどうした」
「私は自分が天才である事を証明しようとしてリリィになりました。いまは『ミス学年平均』なんて呼ばれていますけど、まだ諦めきれないので、努力するキッカケが欲しいんです」
「努力しようなんて考えてる時点でダメだ。今やるべき事をやるしかない」
「なんと言われようとも答えはひとつです。もし、シュッツエンゲルになってくれないのでしたら、私はもう手伝いません」
 いきなり手を離そうとした美影の所為で、エリーンはよろけてしまった。
「ちょっと待て。下級生として上級生を手伝うのは当然だ」
「知ったこっちゃないです。私は動機がないとまずサボる事からはじめるタイプなんで。エリーンさまが認めてくださらなかったら、そろそろ地元に帰ろうと思います。私がこうやって補助するのは、今日でおしまいになりますね」
「……どうしてもか? オレはシュッツエンゲルの契りには興味がないんだが」
「どうしてもですよ。私はエリーンさまをお姉さまと呼びたくてうずうずしてるんで」
「なんだってこんなオレを……本当に物好きだな……」
 エリーンはわけがわからないといった顔で、瞳に困惑の色をにじませた。

「そうですか? 凜梨果さまとエリーンさまのどちらをシュッツエンゲルにしたいかと聞かれて、エリーンさまを選ぶのは凡人並に普通だと思いますけど……」
「どっちもハズレだ。歩穂にしとけ」
「歩穂さまにはもうシルトがいるでしょう? さっきも言いましたけど、エリーンさまは特に何もしなくて構いません。単に私が変わるためのの動機付けですから。私、目標がないと何もやる気がしないんですよ。だってほら、面倒だし」

「もういい。わかった」
 エリーンは深いため息をついた。そんなエリーンを見るのは初めてだった。
「エリーンさま、では……」
「以前は人が寄って来なかったんだがな。ポンコツになった途端、みんながオレに構いやがる」
 エリーンはやれやれと肩をすくめる。
「べつに、以前のエリーンさまでもいまのエリーンさまでも変わりませんよ。ただ、でも……」
「なんだ?」
「以前のエリーンさまだったら私を拒絶出来たと思います。でもいまのエリーンさまに拒否権はないですよね? 本当なら介助してくれる私に感謝すべきですよ」
 そう告げるとエリーンは黙り込んでしまった。仕方ないので美影は言葉を続ける。
「私にとってはいまの状況はラッキーなのかもしれませんね。エリーンさまはエリーンさまで、私という後輩が居てくれてとてもラッキーです。お互いにツイてますね」
 
言ってから、美影はいまの言葉は失敗だったかなとも思った。
 エリーンにとって、身体の自由を奪われたこの状況がラッキーなはずがない。
「美影」
「は、はいっ」
 怒られると思って美影は縮こまった。
「一度しか言わないが、これだけは言っておく」
「はい……」
 美影は大きな期待と少しの不安で胸が一杯になった。
「オレは結構口うるさいぞ。あとから嫌になっても知らないからな」
「嫌になったら地元へ帰るんで、ほどほどにしておいてください」
「そんな程度の覚悟なら、シュッツエンゲルの契りなどお断りだ」
「あ、ウソですウソです。お姉さまの事を嫌いになるはずがないでしょう? 何があっても嫌いになんてなりません」
「本当か?」
「この目を見てください」
「お前の目にはこう書いてある。嫌いになる事はないが、ちゃんと言う事を聞くとは言ってない……」
『だってほら、面倒だし……』
 二人の声が綺麗にハモった。

「なんで、オレにはこういう後輩ばかりが寄ってくるんだ……」
 エリーンは嘆息した。
 今まで拒絶し続けたレギオンの加入にはじまって、次はシュッツエンゲルの契りだ。
 避けようのない運命の数々に、エリーンは思わず頭を抱えたくなった。
 そんなエリーンを見て、美影は何かが変わって行くのを感じた。
 それはきっととてもいい事なのだと思える。
 美影にとって、リリィとなってからいまが一番幸せなときだと思えた。

 

 

 

 

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■使用CHARM

・BC-L3B ハルベルーク

 静岡に工場を置く無認可メーカの非正規品CHARMで、高出力のブラスターと伸縮自在のハルバートがセットになった銃剣です

 シューティングモードの使用においては他のCHARMに見劣りしない火力と高い命中精度を発揮しますが、ハルバートモードは補助的な役割しか果たしません。

 スラッシュとシュートの双方を両立させている制式型のCHARMと比べると不完全な性能と言えます。

 

 

 

 

 

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■レアスキル『フォグ』

 マギを霧に変化させる能力です。
 敵から身を隠したりして、かく乱に使うのが一般的ですが、霧に酸のような溶解力を持たせて『毒霧』として使う事もできます。

 『毒霧』の攻撃力は術者の魔力に比例し、有効範囲に反比例します。
 美影のスキラー数値ではヒュージを即死させるほどの威力はないので、結界のように張って、敵の体力を少しずつ削るような使い方をしています。

 

 

 

 

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 現在のポジションはアタッキングゾーンならびにタクティカルゾーン。
 主な役割はレギオンの側面を守るウイングガード。
 近接戦闘能力に劣る四十九院美影をアタッキングゾーンに配置しているのは人材不足ゆえのミスキャストだと思われますが、不思議と機能しており、防御成績、撃墜成績共に悪くありません。

 この結果には報告書を受け取った生徒会も首をかしげています。

 

  

 

 

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